つづき
彼女は、今も美大目指して頑張ってます。多摩美だったかしら、今のところは補欠合格をいただいていて、でも番号があとの方だから、駄目かもしれないと笑っていて。そんなことないし! と私は思って。思っただけで言えなかったのは、彼女の絵を見ながら泣いてしまっていたからでした。なんだかすごく悔しかったです。こんなにたくさんたくさん絵を書いてて、彼女の部屋にあるだけでもすごくたくさんなのに、絵塾の方にもあるという話を聞いて。
私自身も比べ物になりませんが多少絵筆を取ります。なので、デジタルじゃなくて、いやデジタルもそうだけど、失敗できないアナログで描くために必要なものとかどれだけ力がいるかとか、わずかながらですがわかります。どれだけ時間をかけて一枚一枚これだけの量を描いても、たった一回の試験で是非を決められるというのはすごく悔しい。「つらい、嫌いになりそう。人の絵見ててもあら探ししてる自分がいていやになる。でもやめようとは思わないんだよね」
彼女の描く絵が今も昔好きです。この間家に押し掛けて、色々喋って。すごく絵を描く人になってました。絵を描く人になっていたけど、それでもなにひとつ変わってない彼女に驚いたりもしました。不思議な感じ。変わってるのに変わってなかったの。
絵の世界は私が憧れていても行けなかった世界という思いがあって、絵を描くのは好きだったけど、誰かに自分が大事に描いたものを否定されるという可能性を前にして、それを押しのけてまでいけるほどの情熱は無かったのです。だから、スバルさんにはすごく憧れてて、すごいなって思いがある。
そのかわり、文章は誰に何を言われても書き続けないと生きていけない気持ちであるのですが。天秤がどちらに傾いたかと聞かれれば、つまりそう言うことですね。
(で、「つづき」に隠してるしまあいいかと思うのでもう言ってしまうと)
それでも、私は絵のそばで勉強してます。どんな場所で、環境で、今、学んでいるかというと、文化財を修復するという目的を掲げた場所にいます。絵と本という対象は限られていますが、ヨーロッパ美術や、日本画、古書など、それらを直すための勉強をしてます。専門をどれにするかはまだ決めてませんが、絵は好きだけど耐えられないから美大は目指さないだのなんだの。なんだかんだいって、結局は離れられなかったということですね。大事なものっていうのは、そういうもののことです。
私は私なりに勉強したいこととやりたいこと、そばにいたいもののことを考えた上での今があって、スバルさんは自分のやりたいことのために今頑張ってます。
やりたいことがあるなら、「朝起きる時夜寝る時、頭を埋め尽くすほどの何かがあるなら、それはもうそれしかないということだ」と言われたことがあります。私はその言葉を信じて今やっていけている気がします。書いてもいいのだと思える気がします。
私は私で情けないことに公開しているお話の一つもまともに終わらせられていない現状ですし、スバルさんもまだ坂道の途中です。スバルさんはまだ補欠合格の可能性があって、私はただその可能性に今は祈っているしかないです。祈ってるだけです。祈りながら、文字を綴ってます。
細々と続いているサイトですが、もしもスバルさんの4年以上前の絵を覚えている方がいれば、一緒に祈っていて欲しいです。彼女が彼女のやりたい場所へ行けるように。
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